SEEDA『みたび不定職者 (feat. Jinmenusagi & ID)』は、日本のヒップホップシーンを牽引してきたラッパーSEEDAが、Jinmenusagi、IDという実力派を迎えて制作した注目のコラボレーショントラックである。タイトルに「みたび」と付いていることから、過去作との関連性を持つシリーズ的な楽曲である可能性が高く、SEEDAのキャリアを追ってきたリスナーにとっては特別な意味を持つ一曲かもしれない。ストリートで培われたリアルな視点と、社会の枠組みに収まらない生き方を描いたテーマ性が、タイトルから強く伝わってくる。
ビートはダークでミニマルな質感を基調としているように聞こえ、どこかニューヨークのアンダーグラウンドヒップホップを彷彿とさせる硬派なサウンドメイクが印象的である。SEEDAのラップは相変わらず言葉の一つひとつに重みがあり、淡々としながらも聴く者の胸に深く刺さるフロウを展開している。Jinmenusagiは独特のねじれたフロウと鋭いワードセンスで楽曲にスパイスを加え、IDもまた存在感のあるバースでトラック全体の密度を高めている。三者三様のスタイルが交錯することで、一本調子にならない立体的な構成が生まれているといえる。
リリックのテーマは「不定職者」という言葉が示す通り、決められたレールの上を歩かない者たちの矜持や葛藤を描いているように感じられる。HIPHOPCs編集部としては、本作がただの自虐や開き直りではなく、自らの選んだ道を肯定する静かな覚悟を表現した一曲と捉えられる。深夜の帰り道や、一人で考え事をしたい時に聴きたくなるような、内省的でありながら芯の強さを感じさせる楽曲である。SEEDAが『みたび不定職者 (feat. Jinmenusagi & ID)』で見せたこの世界観は、日本語ラップの奥深さを改めて証明するものだ。